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企業が保有する資産を売却することで資金を調達する方法は「アセット・ファイナンス」とも呼ばれます。
保有する資産(asset)を売却して資金調達をするためです。
証券化はアセット・ファイナンスを実行する一つの方法を提供することで企業の資金調達の幅を広げます(もちろん業績の悪い企業だけがアセット・ファイナンスをするというわけではありませんので注意してください)。
特定の資産だけを選んで取引できるという証券化の特性はオリジネータに対して保有する特定のリスクを選んで他者に移転する方法も提供します。
資産を証券化して売却することは現在の確実な資金の受け取りと引き換えにその資産が将来生み出す不確実なーすなわちリスクのある者へと渡すことに他ならないからです。
このため特定の資産に関わるリスクを抱え込み過ぎた企業ならばその資産を証券化することでその特定のリスクだけを投資家に売却し転嫁できることになります。
例えば貸付け残高が増えてそれに伴うリスクが過剰になった金融機関なら貸付け債権を対象資産として証券化を行うことで貸付けのリスクを証券化金融商品の購入者に移転できます。
米国でMBSが発行され始めた背景にはMBSを投資家に売却することで住宅ローンを貸付ける金融機関が抱えるリスクを投資家に転嫁するという目的がありました。
クレジットカードローンの証券化か盛んに行われるのはABSを発行してクレジットカードローンのリスクを投資家に転嫁することで金融機関がリスクを負うことなく貸付け業務に関わる手数料だけを儲けられるからです。
また地震や台風等の自然災害による被害への保険金支払いのリスクが証券化されるのはそのような自然災害の被害への保険を売ったために災害発生時の保険金支払いリスクが過多になった保険会社が保険金支払いリスクを、証券化金融商品を購入する投資家に移転するためです。
これに加えて保険リスクの証券化には従来の保険・再保険市場を越えて資本市場の参加者へも保険リスクを移転可能にしたという意義があります)。
さらに天候リスクを証券化すれば気温や天候の変動によって引き起こされる企業の収益の変動リスクを、証券化金融商品を購入する投資家に移転できます。
このように証券化の手法はオリジネータが直面する様々なリスクの中から特定のリスクを選び出しそのリスクを他者に移転することでリスクを管理するという側面でも有効に利用されているのです。
対象資産の所有権をそもそもの所有者であるオリジネータから特別目的事業体(SPV)に移す倒産隔離の過程は証券化のもう一つの重要な利用法をもたらします。
それが特定の資産を取り出してオリジネータのバランスシート(貸借対照表)の資産項目から除外する「オフバランス化」です。
これは本質的には会計上の操作ですが企業にとって実質的に大きな価値をもたらします。
現代の市場では自己資本比率等の財務指標の改善が制度上または経営評価上の点から重視されるからです。
この典型例がBIS規制対策への証券化の利用です。
BIS規制は銀行の自己資本比率に関する規制で貸し出し額に対し制度的に定められたリスク・ウェイト有を銀行に要求するものです。
この規制に従うと銀行は貸し出しを増やせばそれに応じてより多くの資本金が必要になり保有する資本金の額によっては規制を満たすことが難しくなってしまうこともあります。
もちろん資本金を増やすことが一つの解決策ですがそれが難しい場合には貸し出し債権を証券化することで問題を緩和できます。
証券化によって貸し出し債権の所有者を銀行から特別目的事業体に変えることで銀行はこの貸し出しを貸借対照表の資産項目から外し貸し出し総額を減らすことができるからです。
証券化は資産項目の圧縮以外にも役立ちます。
例えば資産を証券化した売却益で保有する負債の一部を返済すれば貸借対照表上の負債額を減らせます。
こうすれば負債資本比率を改善することができます。
高い格付け取得等のために財務指標の改善が重要視される現在一般の事業会社にとってもこれは魅力的な手法です。
このように特定の資産を選んでそれを貸借対照表の資産項目から取り外す(オフバランス化する)ことができるという特性から証券化は財務指標をコントロールする手法としても重要な役割を果たします。
売掛金を保有する企業を思い浮かべてください。
売掛金は将来この企業に支払われるはずのお金ですが本当に回収できるかどうかは実際に支払われるまでわかりません。
企業にとってこれはリスクです。
さらに支払われるとしてもそれまでの時間を待たなければならず待っている間は他の用途には利用できません。
手元資金をできるだけ増やしたいと考える企業ならこのような状況の改善を望むでしょう。
証券化はこの問題への一つの解答となります。
売掛金を証券化して売却することで売掛金を回収するリスクが証券化商品の支払い金のリスクとして企業から証券の購入者に移転されるばかりでなく証券化商品の売却益が現在の利用可能な資金として企業の手に入るからです。
現在ただちに利用できる手元資金が増えれば企業の資金繰りは楽になり新たな事業にも取り組み易くなり経営の機動性も上昇します。
このように証券化には対象資産が生み出す将来のキャッシュフローと引き換えに現在の資金を手に入れるキャッシュ・マネジメントの一つの方法として利用可能な手元資金を増やすメリットもあるのです。
さてもしも対象資産を容易に売却できるなら以上に挙げたメリットは実は証券化によらなくても達成できるものばかりです。
資産を売却してしまえばそれでいいからです。
証券化を行うには様々なコストがかかります。
それでも証券化を選ぶ理由は対象資産をわざわざ証券化して売却することに資産をそのまま売却する場合にはないメリットがあるからです。
そのメリットとは証券化金融商品にした方が対象資産をそのまま売ろうとするよりも容易に売却できる点です。
このように売却を容易にするためには証券化の次のような仕組みが役立っています。
小口化です。
通常売却の対象とする資産の価値額は大きくそれをそのまま購入できる大きな資金力を持った投資家はそういません。
ところがこの資産を対象として多数の証券を発行するなら一つひとつの証券の価値額は小さくなりあまり資金力を持たない投資家でも購入できることになります。
資産が生み出すキャッシュフローの取り分(シェア)を表す証券を発行して小口化することで購入者となりうる投資家の数が増え対象資産の売却もそれだけ容易になるのです。
流動性の付与です。
小額の投資対象でも購人後の転売が難しければ投資家はそもそもの購入に躊躇するでしょう。
しかしながら投資対象が証券であればそうでない場合に比べて転売は容易になります。
証券に与えられるこのような流動性により証券化をすれば対象資産への投資対象としての魅力も増しそれだけ売却も容易になります。
ストラクチャリングです。
ストラクチャリングとは信用補完の取り付けや証券化商品の支払いへの優先劣後構造等の導入によって対象資産が生み出すキャッシュフローを様々なリスク要因を調整しつつ分解し異なる支払い金の構造を持つ異なる証券化金融商品を作り出すことでした。
このような作業を行うことで対象資産のキャッシュフローを投資家の需要に適合するようにコントロールして切り売りすることが可能になります。

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